もうマスタリングで悩まない!
楽曲制作の最終工程にあたるマスタリング。
プロの現場ではマスタリング専門のエンジニアも存在するほど、その工程は繊細なものです。
ほんの少しの微調整が楽曲全体に影響を及ぼしてしまう重大な作業ですが、Ozone 11があれば、内蔵されたAIによってマスタリングの道筋を示してもらうことができます。
この記事では特に初心者の方に向けて、Ozone 11の効果的な使い方を紹介していきます。
iZotope Ozone 11の購入先

iZotope製品は単体購入ではなく、複数のプラグインがセットになったバンドルの購入がおすすめです!お得な購入方法はこちらの記事を参考にしてみてください!
iZotope Ozone 11はこんな方におすすめ!

- マスタリングで何をすればいいのか分からない方
- 些細な音の聴き分けが困難だと感じる方
- 楽曲に合ったマスタリングを知りたい方
Ozone 11の使用例
ここからはOzone 11の使い方を簡単に解説していきます!
アシスタント機能による自動マスタリング
Ozone 11に搭載されたアシスタント機能により、そのトラックを解析してオススメのマスタリングチェーンを提案してもらうことができます。
Ozone 11内で複数のモジュール(EQやコンプレッサーなど、一つ一つの役割をこなすエフェクトのことを指します)を組み合わせることで、その楽曲に沿ったエフェクトが提示されます。

解析したいトラックにOzone 11を立ち上げたら、Master AssistantボタンをクリックすることでMaster Assistantビューが起動します。
その状態で楽曲の中で最も音量の大きいパートを再生するだけでOzone 11の解析が始まり、AIが自動的に楽曲に最適なマスタリングを提案してくれます。
基本的には楽曲のサビやドロップにあたるパートを聴かせると良いでしょう。
今回は以下の楽曲にOzone 11を適用してみます。
↑Before After↓(※音量が大きくなります)
いかがでしょうか。たった1クリック+再生のみで、楽曲のスタイルに合ったマスタリングが提案されました。
特に初心者の方であれば、これだけの工程で楽曲のバランス調整と音圧向上が期待できてしまうまさにチートツールになっています!
提案されたマスタリングのカスタマイズ
Ozone 11によって提案されたマスタリングの結果は、もちろんそのまま使うだけでなく簡単に好みに合わせてカスタマイズしたり、より詳細に調整を加えたりと自分好みの音にすることができます!
まさに、マスタリングはこれ一つあれば完結してしまう万能ツールと言えるでしょう。

- ①Module Viewタブ:EQやコンプレッサーなど各モジュールを個別に設定する画面に移動。
- ②Gain Match:Ozone 11の処理によって発生した音量変化を自動的に補正。音量が上がることで音が良くなったように感じる錯覚に惑わされず音質変化のみを確認することが可能。
- ③Global Bypass:全ての処理をバイパスして原音を確認。
- ④Relearn:Master Assistantを再度実行。
- ⑤Target Library:Master Assistantが処理を行う際、目標とするターゲットをジャンルごとに選択。右上の「+」ボタンから手持ちのオーディオファイルをターゲットに設定することも可能。
ターゲットは後述するTonal Balance、Vocal Balance、Stereo Width、Dynamics、Loudnessに影響。 - ⑥Tonal Balance:楽曲の周波数バランスを目標に近づける強さを調整。Equalizerモジュールの強度を0~200%の範囲で変更。
- ⑦Loudness:最終的なラウドネス(音圧)の大きさを調整。Maximizerモジュールのゲインを±4dBの範囲で変更。
右上のOutput levelで最終的な出力音量を最大(-0.10dB)まで大きくするか、ストリーミング向け(-1.00dB)にするか選択可能。 - ⑧Vocal Balance:一つのオーディオファイルの中からAIを使ってボーカルを分離し、ボーカルとオケのバランスを調整。Master Rebalanceモジュールのオンオフを切替可能。
- ⑨Extras:そのほかの要素を個別に調整。
・Dynamics Match:曲中で音が大きい部分と小さい部分の音量差(ダイナミックレンジ)を目標に近づける強さを調整。Impactモジュールの強度を0~100%の範囲で変更。
・Width Match:楽曲の左右の広がり(ステレオ幅)を目標に近づける強さを調整。Imagerモジュールの強度を0~100%の範囲で変更。
・Clarity Amount:「毛布を引き剥がしたような音」と表現される、音の明瞭感を増す効果のあるClarityモジュールの強度を0~100%の範囲で変更。
・Stabilizer Amount:全体のバランスや耳障りな成分を処理するイコライザーであるStabilizerモジュールの強度を0~100%の範囲で変更。
注意点としては、Loudnessセクションを除いてほとんどのパラメーターはTarget Libraryで設定した目標値に近づける働きをするという点です。
あくまで目標値ありきなので、つまみを上げるからといって必ずしも特定の要素が強調されるというわけではないということを覚えておいてください。
Module Viewの詳細設定
Module Viewタブボタンをクリックすると、詳細なモジュールを個別に設定する画面に移動できます。
Ozone 11では、EQやコンプレッサーなど、17種類のモジュールを組み合わせて自由自在なマスタリングチェーンを組むことが可能です。
Master Assistantを実行することによって設定されたモジュールチェーンを個別に調整したり、未使用のモジュールを新たに立ち上げたりすることもできます。
つまりAIに頼るのみではなく、ご自身の理想のマスタリングを行うことが可能です。初心者からプロまで使用しているマスタリング用プラグインというのも納得できますよね。
AI処理だけではなく、自分でも少し変更したいと思った場合は以下に説明している詳細をご覧頂き、各モジュールがどんな役割をするか参考にしてみてください。

- ①Stem Focus:ボーカル、ドラム、ベースを選択すると、全てのモジュールがそのステムのみに適用される。デフォルトのFull Mixでは楽曲全体に適用。
- ②Presets:プリセットマネージャを開きプリセットを選択可能。購入したその日からすぐに使える多数のファクトリープリセットが、マスタリングだけでなく様々な目的別に搭載。
- ③Signal Chain:モジュールの種類と順序を変更。
- ④Module Interface:③で選択したモジュールごとの詳細設定とメーター。
- ⑤Input/Output Gain and Meters:入力/出力音量のメーター表示とその大きさを調整。瞬間的な最大音量を示すPeakと、一定時間の平均音量を示すRMSを搭載。
- ⑥Bypass/Gain Match:Master Assistantビューの②③と同様、Ozone 11の処理全体のバイパスと音量補正のオンオフを変更。
- ⑦Sum to Mono/Swap Channels:L/Rチャンネルの音声を合算してモノラル化するSum to Monoボタンと、L/Rチャンネルの音声を入れ替えるSwap Channelsボタン。ステレオ音声の問題をチェックするために利用可能。
- ⑧Reference:Referenceパネルを開き参考音源として手持ちのオーディオファイルを読み込むことが可能。電源ボタンをクリックするとリファレンス音源の再生オンオフを切替。
- ⑨Codec:mp3またはAAC形式に変換した際の音質変化を再現する。Codec Previewパネルを開いて音質を設定し、電源ボタンをクリックすると音質変化のオンオフを切替。
- ⑩Dither:ディザリング(書き出し等でビットレートが下がる際、意図的に微小なノイズを付加して最終的な音質劣化を防ぐ手法)の設定が可能。DAWの付属機能などでディザリングを行わない場合はここで設定。
- Clarity:トラックを数百バンドの周波数に分割し、耳障りな共振などの成分を取り除くことで明瞭感のあるサウンドに近づける。
- Dynamics:リミッターとコンプレッサーを組み合わせ、楽曲のダイナミクスを調整することでサウンドにまとまりを出す。
- Equalizer:アナログ感のあるフィルターとデジタルなイコライジングを選択し、狙った周波数を正確にブースト/カットする。
- Dynamic EQ:Equalizerモジュールよりもリアルタイムに特定の周波数をコントロール可能。
- Exciter:楽曲を最大4つの周波数に分割し、個別にサチュレーションを与えることでサウンドに明るさや太さを与える。
- Imager:楽曲を最大4つの周波数に分割し、個別にステレオ幅を広げる/狭めることでサウンドに広がりや安定感を出すことが可能。
- Impact:曲中で音が大きい部分と小さい部分の音量差を調整することで、サウンドにパンチや音圧を出すことが可能。
- Low End Focus:EQやコンプレッサーでは解決しにくい低域の濁りに注目し、すっきりしたパンチのあるサウンドを演出したり逆に低域をぼかすことも可能。
- Master Rebalance:ミックスされた後の2mixトラックからAIによって楽器を検出し、ボーカル、ベース、ドラムの中から選択したパートのボリュームを調整可能。
- Match EQ:処理したいトラックとリファレンス楽曲をそれぞれ読み込み、前者の周波数特性を後者に近づけるようなEQ処理をワンノブで行うことが可能。リファレンスに近づけるマスタリング作業がより簡単に。
- Maximizer:サウンドの迫力や明瞭さを保ったまま音量感を上げることができるマキシマイザー。モジュールチェーンの最終段に挿すことが多い。
- Spectral Shaper:指定した周波数帯域に対して耳に刺さる音/篭って聴こえる音など問題のある部分を自動で検出し、減衰量を調整。
- Stabilizer:全体のバランスや耳障りな成分を処理するためのダイナミックEQに近いモジュール。ジャンルに合わせた音作りが可能。
- Vintage Compressor:ビンテージコンプレッサーの動作を再現したモジュールで、サウンドを圧縮すると同時に歪みを与えて楽曲に色付けを行うことが可能。
- Vintage EQ:2種類のビンテージEQの動作を同時に再現したモジュールで、デジタルEQよりも自然なEQカーブで楽曲の周波数バランスを調整することが可能。
- Vintage Limiter:ビンテージな真空管コンプレッサー(リミッター)の動作を再現したモジュールで、波形のピークを抑えると同時に歪みを与えて楽曲に温かみを出すことが可能。
- Vintage Tape:ビンテージなテープデッキの動作を再現したモジュールで、楽曲に不要なノイズを発生させることなくサチュレーションを加えて楽曲に色付けを行うことが可能。
各エディションごとの差
Ozone 11には、最低限の機能が搭載された入門版のElements、機能とカスタマイズ性が追加されたStanderd、全ての機能が制限なく利用できるAdvancedの3つのエディションが存在します。
おすすめは断然Advancedです!ここまで説明してきた全ての機能を使うことができる上に、各モジュールを個別プラグインとして各トラックにインサートできるので、マスタリング用途以外でも細かい取り回しが圧倒的に向上します。
- Elements
・プリセットの利用
・Master Assistant(一部機能を除く)
・Maximizer, Imager, Equalizerモジュール(機能制限あり) - Standerd
・リファレンストラックの利用
・Master Assistantの全機能
・13/17種類のモジュール(13種類のうち一部は機能制限あり) - Advanced
・AI Stem Focus
・全モジュール全機能
・各モジュールを単体プラグインとして利用可能
充実の公式チュートリアル
ここまでMaster Assistant機能を中心としてマスタリングに要点を置いて解説してきました。
ただし、Ozone 11の機能はこれだけではありませんし、マスタリング以外に様々な場面で有用なプラグインとなっています。
Ozone 11のことがもっと気になる方、Ozone 11を最大限使い倒したいという方は、是非iZotope公式YouTubeチャンネルから提供されているチュートリアル動画を参考にすることをおすすめします。
また、旧バージョンであるOzone 10以前のチュートリアル動画についても、Ozone 11との共通部分については参考にすることができます。
多くの動画が日本語で提供されており、より実践的・ハイレベルなコンテンツが揃っています。
まとめ
iZotope Ozone 11は、誰でも簡単にマスタリングの最初の一歩を踏み出すことができ、さらに細かく追い込んでいくことも可能なマスタリング向け総合エフェクトプラグインです。
DTM初心者の方の楽曲制作の仕上げはもちろん、様々な目的に合わせたマスタリングアシスタントとしてDTMer必携のプラグインとなっています。
皆さんもぜひOzone 11を手に入れて、ワンランク上のマスタリングを楽曲に取り入れてみてはいかがでしょうか。